ともの幸せ



 世間を騒がせた怪盗団騒動から一年。世間から怪盗団の話題はとうに消え去り、怪盗団のメンバーもそれぞれの日常を送っている。
 大学進学にあわせ上京したは、今は大学近くのマンションを借り一人暮らし……もとい、モルガナと二人暮らしをしている。交通の便も悪くないことから、怪盗団男子チームが集まるのは自然とこの部屋になっていた。まるで当時のルブランのように。
 とある夏の日。竜司と祐介がとモルガナの部屋を訪問し、夕飯をとりしゃべり倒していればいつの間にか終電の時間を過ぎていた。それももういつものこと。朝を過ぎた時間帯に起きた三人は、順番に洗面台へ向かう。
「借りるぜー」
 祐介と入れ違いに洗面所へ入った竜司は、コンビニで買った歯ブラシを手に取った。歯を磨きなら何の気なしに洗面台を眺めれば、女物の化粧水や洗顔フォーム、のものと色違いの歯ブラシと、の彼女を思わせるものが揃っていることに気づく。それは洗面台だけではない。リビングにものものとは思えない可愛らしい小物がいくつか置いてあった。昨日の夜には竜司がリビングにある明るい色のクッションに座ろうとしたらに没収された、なんてこともあった。あれはきっと彼女専用のクッションなのだろう。
(うまく行ってんだな)
 と彼女……は秀尽時代のクラスメイトのため、当然竜司もと面識はある。が、特別仲がいいわけではない。高校三年生のときはが地元に帰ってしまい遠距離だったため、竜司もなにかと親友の彼女であるのことを気にかけていたが、が再び上京した今あまり接点はない。
 ただ、二人が相変わらず仲がいいことを知ると嬉しくなる。二人は遠距離恋愛だった一年を乗り越え、今は穏やかに幸せを享受しているのだろう。親友の幸せは、いいものだ。
「竜司、まだか?」
「あ、わり」
 キッチンでコーヒーを用意するに急かされ、竜司は口をゆすぎ顔を洗った。すでにリビングでくつろぐ祐介とモルガナの隣に座れば、すぐに朝のコーヒーが運ばれてくる。
「うまく行ってんだな」
 竜司用のあまり苦くないコーヒーを受け取りながら、に声をかける。はすぐに言葉の意味を理解したのか、ふっと笑った。
「おかげさまで」
 柔和な微笑みを見せるを見て、竜司は歯を見せて笑った。そんなふたりの横で祐介が首を傾げるから、竜司は「のこと」とだけ説明する。それだけで祐介もすべてを理解したようだ。
「幸せそうでなによりだ。今度、ふたりを絵のモデルに……」
「ヌードはなしだぞ」
「なっ!? のもか!?」
 驚く祐介の横でモルガナがニャフフと声を出して笑う。当たり前だろ、とため息をつくのはと竜司のふたりだ。
 今日もの部屋は、笑い声に包まれる。