はんぶんこ
夕飯の片づけをほぼ終え、テーブルを拭いているときのこと。
「あ、アイスまだあった」
冷凍庫を覗くくんのその言葉で、わたしは顔を上げた。
「アイス!?」
「うん、この間買ったやつ。でも一個しかないな」
くんはバニラ味のカップアイスをひとつ手に取りわたしの方を向く。
わたしたちは二人、アイスはひとつ、となれば。
「半分こする?」
「うん!」
導き出される答えは「半分こ」に決まっている。今日は夕飯のカレーライスに続き、思わぬデザートまであるなんて。
くんが食器棚からお皿とスプーンを出してくれるので、わたしはソファの上で丸まるモルガナちゃんに声をかける。
「モルガナちゃん、アイスちょっと食べる?」
「うにゃう!」
モルガナちゃんは大きく頷くと、青い瞳をきらきらさせてテーブルの前に座る。「そんなにないぞ」と言いながら、くんがアイスを持ってやってきた。
「ありがとう、くん」
「ん」
くんとアイスを半分こにして、そこからさらに一口分モルガナちゃんへ。カップの蓋を裏返しにしたお皿をモルガナちゃんの前に置くと、モルガナちゃんは「にゃ!」と嬉しそうな声を出した。
「いただきます!」
スプーンでアイスを一口掬って口の中へ。うん、おいしい! 優しいバニラの甘味が体に染み渡っていく。
「おいしいな」
「ね! 幸せ……」
甘いものひとつで幸せを感じられるなんて、我ながらお手軽な人間だなあと思う。けれど、くんとモルガナちゃんと過ごす贅沢な時間はやはり幸せのかたまりなのだ。
「うにゃ~」
「おいしいね、モルガナちゃん」
チロチロと舌でアイスを味わうモルガナちゃんの額を撫でる。うう、可愛いなあ。
「、はい」
「えっ」
モルガナちゃんを見つめていると、くんがわたしのお皿にスプーン一杯分のアイスをわけてきた。
「モルガナにわけた分」
「でも……」
「いいから」
「じゃあ……いただきます!」
くんの気持ちをありがたく受け取って、一口分のアイスをぱくり。うん、この一口は特別おいしい!
「ニャウ~、ニャッ!」
「からもらったんだからいいだろ」
くんとモルガナちゃんのやりとりに首を傾げていると、くんが「オマエもワガハイにわける優しさを見せろよ」と言っていると教えてくれた。
「くんは優しいよ」
モルガナちゃんはこう言うけれど、くんだってちょくちょくモルガナちゃんにおやつをわけている。モルガナちゃんも、きっとちゃんとわかっている。
「もう終わっちゃったね」
さて、半分この楽しい時間はあっという間におしまいだ。くんに分けてもらっておいてなんだけど、少し、物足りないなあ、なんて。
「物足りないな」
「くんも?」
くんの言葉にぱっと顔をあげる。わたしもくんも物足りない、ということは。
「買いに行く?」
「行く!」
くんの問いかけにわたし は勢いよく手を挙げた。早速上着とマフラーを着て、モルガナちゃんはくんの鞄の中へ。
「何味にする?」
「バニラもいいけど、チョコもいいかな。ん~……」
バニラ、チョコレート、ストロベリー。ほかにもたくさんあるフレーバーを想像していると、無意識に顔が綻んでしまう。
「違うの選ぼう。それで」
「半分こにする?」
「そう」
「たのしみ!」
「にゃう!」
「もちろんモルガナちゃんもね」
三人で家を出て、明るい気分でコンビニまでの道を歩く。贅沢な時間は、まだ続く。