いじわる
休日の昼下がり。特にやるべきこともなく、やりたいこともなく。時間を持て余したわたしはソファに寄りかかりながらぼんやりスマホを眺めている。
それは隣に座るくんも同じらしい。先ほどからスマホを眺めながらあくびを繰り返している。
テレビをつけてみたけれど、面白い番組はやっていない。リモコンをテーブルに置き直して、再びソファに寄りかかった。
どうしようかなあ、くんを誘ってなにかゲームでもしようかなあ。隣のくんに目をやれば眠そうに目を細めている。
じっとくんを見つめてみる。ふと視線が行ったのは薄い唇。キスしたい、な。ふと心に浮かんだ小さな欲が、じわじわと疼いていく。
「くん」
「ん ?」
「キスしていい?」
くんはわたしの問いかけに目を丸くすると、すぐに妖しい笑みを作る。
「ダメ」
「えっ」
思わぬ返答に、わたしは小さく声をあげてしまった。そうか、ダメなのか。くん、今はそういう気分じゃないのか。それなら仕方ないかな。でも、キスしたかったな。
落ち込んだわたしはソファの上で膝を抱えた。しゅんとうなだれていると、くっくと喉を鳴らすような笑い声が聞こえてきた。
「冗談」
その言葉とともに、くんがわたしの髪を撫でてくる。冗談って、冗談って!
「くん!」
「ごめんごめん」
「意地悪!」
くんの意地の悪い言葉に頬を膨らませていると、くんは再び口元に笑みを浮かべた。
「もうキスしたくない?」
くんって本当に意地悪だ。ずるくて、意地悪で、でもわたしはそんなくんが。
「……したい」
そんなくんが、わたしは好きなのだ。
「ん」
わたしの唇に、くんの唇が重なる。甘い感触に、胸の奥が疼き出す。
「くん」
「ん?」
「もう一回」
くんはわたしの言葉に、再びのキスで答える。
甘いキスと、意地悪なくん。そのふたつに溺れていく。