食いしん坊






「にゃーう」
 ちょんちょんとモルガナちゃんは前足で鏡餅をつつく。年末にくんが買ってきてから約十日間飾られた鏡餅もすっかりリビングに馴染んでいる。
「うにゃ」
「あっ」
 上に乗せたレプリカの橙が落ちそうになる。思わず声を出すと、後ろからくんが手を伸ばしてそれを受け止める。
「もう鏡開きだな」
「うにゃっ」
「おしるこ食べる?」
「食べる!」
 鏡開きと言えばやはりおしるこだろう。もうすでに小豆もあんこも買ってある。
 この鏡餅は中に四角いお餅が入っているタイプだ。鏡餅を裏返しフィルムをはがして中のお餅を取り出した。
、餅何個食べる?」
「うーん……二個!」
 甘ーいおしるこを想像し ながら、個包装されたお餅を二個手に取る。するとくんがくすりと笑う。
「食いしん坊だな」
「!! だって!」
 かあっと頬を赤くしていると、くんも二個のお餅を取り出した。
くんも二個食べるんじゃん!」
「俺も食いしん坊だから」
 くんはお餅を手に台所へ向かうから、わたしもその後をついていく。買っておいた小豆を取り出して、おしるこの用意を始めた。
 くんが小豆を煮るから、わたしは頃合いを見て隣でお餅を焼き始める。小豆もいい感じに溶けてきた。あんことたっぷりの砂糖も入れて、最後に焼いたお餅を加えて温める。
「うにゃーう」
「もうできる」
「にゃう!」
 モルガナちゃんも待ちきれないのか台所へやってくる。お椀を二個とモルガナちゃん用のお皿を用意して、できあがったおしるこをお椀へ。
「あっつ……」
「気をつけて」
 熱々のおしるこを入れたから、その分お椀も熱々だ。気をつけてリビングのテーブルに置く。
「モルガナちゃん、熱いから気をつけてね」
「にゃう……」
「ほら」
 小皿に入ったモルガナちゃんのおしるこを、くんがふーっと息を吹きかけて冷ます。モルガナちゃんは待ち遠しいと言わんばかりに目を輝かせてその様子を見つめている。
「いただきます!」
 そんな二人の横でわたしはおしるこに口をつけた。うん、甘くておいしい! 思い切って高めのあんこにしてよかった。あんこの上品な味わいが優しい 甘味となって口の中へ広がっていく。
「ん~! おいしい!」
 落ちそうなほっぺを押さえて、じっくりとおしるこを味わう。あんこの味は幸せの味。モルガナちゃんもくんが冷ましたおしるこを食べて幸せそうな表情だ。
「うん、おいしい」
 くんもおしるこを一口飲んで、確かめるように頷いた。くんがお餅を口に運べば、白いお餅がびよんと伸びる。わたしもお餅を一口齧れば、切れなかったお餅が伸びる。
「餅もおいしい。二個入れてよかった」
 おいしそうに食べるくんを見て、わたしは笑いながら「食いしん坊」とつぶやいた。するとくんが「も」と笑った。
「二人とも食いしん坊だ」
「にゃー!」
「モルガナちゃんもね」
 もうひとつのお餅も伸ばしてみる。うん、いいお正月の終わりだなあ。