なに考えてるの?






 連休のある日の昼下がり。お昼ご飯も終わり、夕方からのアルバイトまでリビングのソファでごろごろタイムだ。今日はいい天気で、窓からはそよそよとさわやかな風が吹いている。ベランダに干した洗濯物も今日は綺麗に乾きそう。くんとわたしの枕カバーが隣り合って揺れているのを見ると、自然と顔がほころんでしまう。
 ソファの端っこにはモルガナちゃんが丸まっている。撫でたいな、と思ったけれどどうやら眠っているようなのでやめておいた。
隣のくんの目を向ければ、くんは小さくあくびをしていた。くんもアルバイトまでの時間を持て余しているようだ。
 あ、そうだ。くんのコーヒー飲みたいな。今日は二人して朝寝坊し たから朝のコーヒーなかったんだった。
「ね、くん」
「コーヒー?」
 くんはスマホを脇に置くと、わたしの呼びかけにそう返した。
「なんでわかるの?」
 わたしは「くん」と言っただけで、「コーヒー飲みたい」なんて一言も言っていない。どうしてくんはわかったのだろう。
「顔見ればなんとなくわかる」
「う……そんなにわかりやすい?」
「うん」
 う、確かにわかりやすい自覚はあるけれど……。
「さっきはモルガナ撫でたいって思ってた」
「!!」
「合ってる?」
「あ、合ってます……」
「モルガナ見つめてたから」
 うう……。わかりやすすぎて恥ずかしい。わかりやすいと言われがちだけれど、くん相手だ とよりいっそう顕著だ。
「わたしはくんはなに考えてるか全然わからないなあ……」
 クッションを抱きしめながらくんを見つめる。くんの深いグレーの瞳は、なかなか本心を悟らせない。
「よく言われる。でもそんな難しいこと考えてないけど」
「じゃあ今は?」
「なんだと思う?」
「う……」
 そう言われると、わたしもくんの考えていること少しは当ててみたいと思う。くんの考えていること、考えていること……。
「うーん……昨日のゲームの続きやりたい!」
「いや、考えてなかった」
「じゃあ……眠いなあとか」
「よく寝たから今日は眠くない」
「……課題、めんどくさいなあとか」
「思ってなくはないけど」 つまり考えていることはもっと別にあるのか。先ほどお昼ご飯を食べたばかりだから「お腹空いた」もないだろう。
「……わかんない」
 もうお手上げだ。やっぱりくんの考えていることはわからない。
「なに考えてたの?」
 ずいとくんに一歩寄ってそう聞いた。もう降参するから、くんの考えていること、教えて欲しい。
、可愛いなあって」
「っ!」
 思っていなかった言葉に、わたしはクッションで顔を隠した。
くん……」
「ん?」
「本当そういうこと言う……」
 照れくさくてぎゅうっとクッションに顔を押しつける。けれどくんはそのクッションを取り上げてしまう。
く……」
「可愛い」
 くんが妖し い笑みを浮かべてそう言うから、わたしの顔は一気に熱くなる。きっとびっくりするぐらいに真っ赤だろう。
「コーヒー淹れてくる」
「は、はい……」
 くんは表情を崩さずキッチンへ。一方の頭を沸騰させたまま、ソファの上で正座座り。このままくんのコーヒーを飲んだら、蒸発してしまいそう。